クラムチャウダーとチャクラム
私もヒロさんもクラムチャウダーが好きです。
一昨年前の冬、私はレトルトのクラムチャウダーを買ってきて、ヒロさんと一緒に食べました。
ヒロさんはその時、クラムチャウダーを食べるのは初めてだと言いました。
私はヒロさんにクラムチャウダーについての簡単な説明をしました。
「クラムというのは貝のことで、クリームベースの薄いシチューみたいなものだよ」
ヒロさんは「なるほどねー」と言いながら美味しそうに食べていました。
私はついでにミネストローネの説明もしました。ヒロさんは「オシャレな名前ばっかりだ!」と笑っていました。私もその時は特に何も意識せずに、「めっちゃ横文字やもんなー!」と言って笑っていました。
当時、クラムチャウダーがマイブームだったので、その年の冬は少なくとも4〜5回はヒロさんの食卓に並んだと思います。
昨年の冬。ヒロさんと一緒にバーガー屋さんへ行った時の話です。
そのお店では、セットドリンクにクラムチャウダーを選ぶことができました。私は迷わず、クラムチャウダーをオーダーしました。ヒロさんもクラムチャウダーを注文していました。
私は、やっぱヒロさんクラムチャウダー好きなんやな…と思いました。
そのことを本人に伝えると、
「クラムチャウダーが何なのかよく分からなかったけど、ザッチが迷わず頼んだから俺も頼んでみようと思った」
とのことでした。ヒロさんは一年前に食べていたクラムチャウダーのことをすっかり忘れていたようで、初見のように「とても美味しい!」と言って笑顔で食べていました。
私は、ヒロさんが一年前もクラムチャウダーを食べていたこと、そしてその時もヒロさんは今と変わらず美味しいと言っていたことを、そっと伝えました。私もうろ覚えですが、その時ヒロさんは「美味しかったら名前なんてどうでもいいよ」みたいな内容を言っていたと思います。
今年の冬のこと。
私はまたクラムチャウダーを買ってきました。コンビニに売っている要冷蔵のものです。
私は「ヒロさんの好きなクラムチャウダー買ってきたで!冷蔵庫入れとくな!」と言いました。
するとヒロさんは、「クラムチャウダーって何だったっけ?」と言いました。
私は最初、ヒロさんが一年前のバーガー屋での出来事をトレースして、冗談で言っているのだと思いました。しかし、それは冗談ではありませんでした。
ヒロさん曰く、クラムチャウダーという名前もあまり聞き覚えがないし、どんな料理なのかも分からないとのことでした。私はもう一度きちんと、クラムは貝のことで、シチューの薄めの料理で、具がスープサイズでシチューよりも小さくて、見た目はこんなのだよ、とパッケージを見せながらヒロさんに説明をしました。前に何回も食べたことがある旨も伝えました。
ヒロさんは私の説明を聞いて、宮沢賢治の『やまなし』に出てくるクラムボンを思い出したようで、
「クラムボンが笑ったよ、貝…クラム、クラムチャウダー!うん、もう大丈夫、覚えたよ」
と言いました。
私は、クラムボン懐かしいな…と思いつつ、やっと覚えてくれたと安堵しました。ヒロさんはエピソードと共に覚えた記憶は結構強く残るみたいなので、今回はクラムボンが良い役目をしたなと思っていました。
数日後、買い置きしていたクラムチャウダーを食べる予定を立てていた時のことです。
私「ヒロさんは明日の朝ごはん、クラムチャウダーでかまへん?」
ヒ「クラムチャウダーって何やったっけ?」
私「…!!!?!?…あれやで、クラムボンのやつやで?」
ヒ「なんだったっけ?(汗)」
私はもう一度、クラムチャウダーについて説明しました。ヒロさんは私が数日前にも同じ説明をしたこと自体は覚えていてくれたようなので、申し訳なさそうにしていました。朝ごはんの件については快諾してくれて、「うん、クラムチャウダーが良い!」と言ってくれました。
翌朝、ヒロさんは起き抜けに「朝ごはん何?にゅうめん?ザッチ何か作ってくれるの?」と言って、前日の話はすっかり忘れているようでした。私が「クラムチャウダーやで、それでいい?」と聞くと、ヒロさんはハッ!と気付いたようでした。
私がクラムチャウダーを温めている間、ヒロさんはこう言いました。
「クラムチャウダーってそもそも食べ物の名前として認識できないもん、なんか武器の名前みたいで…」
そして、なんの武器の名前だったかなーとヒロさんは考え始めました。私もパッと出てこなかったので、どんなフォルムの武器なのかを聞きました。ヒロさんは、丸い輪っかのようなものを手で持って使うタイプの武器だと言います。
私「それってチャクラム?」
ヒロさん「そう、それー!」
チャクラム(円月輪とも呼ばれる投擲武器の一種)は、こんな感じですw ↓
クラムチャウダーとチャクラムかぁ…なるほどね…確かに音的には近いね、と思いました。
ウダーが何処かへ旅立ってはいるけれど…w
クラムボンは無力だったけど、チャクラムなら今度こそいけるだろうと私は思いました。
そしていつも通り、ヒロさんは美味しいと言ってクラムチャウダーを食べていました。
さらに数日後、性格の悪い私は、ヒロさんに尋ねました。
私「あの貝スープの名前覚えてる?」
ヒ「(ビクッ)!!あれあれ、チャクラム!」
私「そうやな、チャクラムやな。で?」
ヒ「…(´;ω;`) キューン」
私「マジか…」
ヒ「もう貝スープ嫌い…」
私「クラムチャウダーな?」
ヒ「うん…もう食べないからいい…」
さらに数日後、性根が腐っている私は、ヒロさんに尋ねました。
私「まだあのスープ1個冷蔵庫にあるんやけど食べる?」
ヒ「うん!」
私「名前覚えてる?」
ヒ「クラムチャウダー!!もうさすがに覚えたよ!」
私「(おぉ…)じゃあ武器の名前は?」
ヒ「クラ…チャ…(´;ω;`)キューン」
私「チャクラムな?」
ヒ「もうザッチ嫌い…」
数日後…
ヒ「俺の記憶って1個入ったら1個抜けるんかな、まるでアレみたい…」
ザ「ロケット鉛筆?」
ヒ「そうそうw」
という感じで、クラムチャウダーについての話は以上です。こうやって笑い話として記事にできるのは、ヒロさんの記憶力は普段はそんなに問題はなくて、この例が特殊だったからです。
ヒロさんは、ヒロさん自身が記憶したいと強く思った内容や、すごく興味のある内容は、私より覚えていることが多いです。歴代のドラクエのキャラやBGMなどはその良い例です。私とのお出かけの思い出も、ほぼ全部覚えてくれています。しかし、ヒロさんの興味センサーに引っかからない事はスポスポ抜けていくようです。
ということは、私が手作りで極旨なクラムチャウダーを頑張って作ったら、来年も覚えていてくれるという事ですかね?
( いっそ、貝の下処理をヒロさんにお願いしようかなw )
はい。ご紹介に預かりました、ロケット鉛筆脳のヒロです…
そう言うザッチも『〜毎』の読み方をどうしても覚えられず「〜まい」って言うもん。
ヒロが「ごと、ね?」って言うとハッてなるのに覚えられないもん…