小説を読んで、心を整理する【OCD改善】
(約4200文字)
皆さま、お久しぶりです。
長い間、ブログの更新を怠ってしまい、申し訳ありません。
心身共にあまり調子が優れず、ずっと低迷しておりました。
まだまだ本調子ではないので、しばらく安定しない更新となりますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。
さてさて。
今回は、『OCDの私が小説を読んでみて最近感じたこと』を、少し綴ろうと思います。
「思わぬところでリハビリに役立った!」というエピソードです。
もともと私は小説をあまり読まないタイプなのですが、小説を書くヒロさんの影響で、最近ちょこちょこ読むようになっています。
気に入って読んでいるのは、ディストピアを題材としたSF小説です。
『ディストピア』というのは、ユートピア(理想郷)の対語で、『暗黒郷』『地獄郷』『逆ユートピア』とも呼ばれる概念です。
現代の政治的、社会的な問題点を放っておくと、近未来はどうなってしまうのか…
そのような現実風刺を含んだ世界観を描いたものが、ディストピア作品と呼ばれるようです。
例えば、
一見、平和そうで理想的に思える世の中が、実は徹底した管理体制によるもので、本来の人間としての自由が損なわれてしまっている世界。
格差社会で、市民階級が厳しく管理・制限されている世界。
指導者や体制に反抗する存在は、治安維持のために簡単に排除されてしまう世界。
そんな世界を描いた作品に、私は今まで小説に限らず、アニメやゲームを通じて好んで触れてきたように思います。
『暗黒郷』『地獄郷』という通り、作品中には非人道的な世界や情景が描かれている時があります。
昔は “ 怖いもの見たさ ” で読んでいたそれも、現実を風刺したものとして捉えられるようになると、急に現実味を帯び、様々な問題点を示してくれるもののように感じられました。
残念ながら、過度に情報漏洩を気にする、という私のOCDの症状は、過去に読んだそれらの作品の設定が元になっているかもしれません。
社会の負の側面に焦点を当ててしまい、それらに敏感に反応するようになってしまったのです。
私はOCDの悪化を防ぐため、実は比較的最近まで、ディストピアをはじめとする、ある一定の情報をシャットアウトしていました。そのきっかけとなったエピソードを少しご紹介したいと思います。
私がまだOCDの超初期で、「アレ?なんか普段と違うな、気になるな…」程度の症状だった頃、自分の違和感の正体を知りたいと思い、軽い気持ちで情報収集をしたことがありました。
ひとつのブログに辿り着き、私は食い入るようにその記事を読みました。
そのブログは、悪化の一途を辿るOCDの患者さん(以下、Aさん)の症状を記したものでした。記事を書いているのは、Aさんを側で支えるパートナーの方でした。Aさんの不安は日に日に増大し、できることが少なくなっていく様子が克明に記されていました。
『(最終的に)家から出られなくなった』という所で、私は読むのをやめました。
すごく辛そうだな、気の毒だな、OCDは怖い病気だな…と思いつつ、どこか他人事というか、私にはあまり当てはまらないな、と感じていた記憶があります。
しかし、私の症状は日に日に増大し、ふと気付くと、Aさんと似たような事態に陥っていることに気付きました。
加速度的に悪化した私は、家から出られなくなり、そのままの勢いで、ご飯もろくに食べられない、トイレもまともにできない状態になってしまいました。
私は、Aさんの症状を他人事として捉えていた自分を恥じました。
そして、耐性も身構えも無いまま、安易に『怖くて深いもの』に触れるのは止めようと思いました。
恐らく、仮にAさんの症状を知らなかったとしても、多かれ少なかれ私も似たような状態になっていたと思います。
ただ、当時は、壮絶な自分の症状に翻弄され、“ OCDの進行の深刻な一例 ” を知識として得ていたはずなのに、どうにも防げなかった、という事実がのしかかり、そんな自分を呪い、後悔していました。
『一例』を知ってしまったばかりに、私の目の前に次々と『悪化していく』というレールが敷かれてしまうのだ…そう錯覚するほど、私の症状は多岐に渡り、Aさんのブログやその他から仕入れた情報の通りになっていきました。そしてその症状の多くは、かつて自分がおおよそ『他人事』として軽く考えていたものでした。
今では、情報収集自体が悪いわけではなく、その情報をきちんと噛み砕き、苦痛やリスクを我が事として想像しなかったことがいけなかったのだと考えています。
リスクを『他人事』として考え、油断したことのバチが当たったのだと思っています。
(幸い、そのことを意識してから得た知識であるOCDの縁起恐怖などは、未だ私の症状としては表れていません。ご自身も辛いなか、症状などの情報を発信してくださっている方には感謝しています。)
そういうわけで、心機一転、OCDの症状がだんだんとマシになってきたタイミングにあわせ、久々にディストピア要素を解禁しました。
今読んでいるディストピア小説は、主人公をはじめとする登場人物の境遇がそこそこ過酷で、なんとも言えない不快な描写が多くあります。
なかには、私自身が過去に経験し、辛い思い出として封じていた内容に(程度は雲泥の差がありますが)通じるものがあり、苦悩を抱え、自分の感情に翻弄されながらも頑張って生きている主人公に共感し、尊敬の念を抱くときもあります。
小説の内容はフィクションなのですが、要素を細分化すると、そこまで現実離れしている訳でもなく、じゅうぶん身の回りで起こり得る出来事やエピソードが多いです。かと言って、自分で体験するほど濃密で泥沼のような時間が描かれている訳でもありません。
この程良い距離感が、私にとっては主人公を通して自分を冷静に客観視するきっかけになり、問題を克服する足がかりになるような気がしています。
さらに、このディストピア小説に触れることが、私の場合、OCDの治療でよく取り入れられる、認知行動療法の技法『曝露反応妨害法』や『最悪のストーリー』の簡易版、イメージトレーニングとしても機能しているように感じます。
『曝露反応妨害法』は、不安となる要素に直面(曝露)しても、不安がずっと続くわけではないことを認識し、強迫行為を我慢する(妨害)ということを繰り返すことで、OCDの強迫観念と強迫行為の負の連鎖を断ち切るというものです。
『最悪のストーリー』は、例えば不潔恐怖の人に、トイレの汚物入れを素手で触ってもらう…といった過酷な方法です。想像しただけで不安が増大しますが、これも我慢して繰り返すことで、改善する場合があります。不安はいつかおさまるのだと信じ、その気持ちを排除するのではなく共存、もしくは放置するのが効果的なようです。
私の場合、症状が酷かった時には、不安対象が多岐に渡り、かつ、日常生活を最低限営むために必然的に『曝露』や『妨害』が繰り返されていた(食事、トイレ、お風呂、着替えだけで強烈な不安が起こり、確認をやめないと寝る時間すら無かった)ため、心身共に疲弊しきっていました。
なので、日常生活にプラスして、治療として曝露反応妨害法に取り組むことは、とても耐えられるものではありませんでした。
不安が不安を呼び、我慢したことでさらに別の不安が起こり…と、ひとつの要素に集中して克服することもできず、困っていました。
そこから脱した時のことはまた別の記事に詳しく記したいと思いますが、その時も小説やゲームといった『フィクション』という媒体は、私にとって非常に有効でした。
ストーリー中にOCDの不安や不快な感情を誘発する要素があっても、それは虚構だからと言い聞かせ、(時には主人公の勇敢な姿に励まされ)割り切って前を向く練習をしました。感情移入すると強い不安発作が起きましたが、不安の波が引くのは現実の問題と比較するとかなり早かったです。
虚構の不安から派生して、現実の不安も蘇ることがありましたが、その関連付けは、複雑に絡み合った現実の不安同士よりは確実に断ち切りやすく、良い訓練になりました。
さらに、問題を細分化し、克服したい内容以外の刺激(不安)を極力抑えることで、『不安がおさまる』『不安を放置する』という感覚をより強く認識できるようになりました。具体的に言うと、安心できるお布団の中で、ある程度リラックスしながら、本を読んだりゲームをしたりするということです。ただのリラックスタイムのような行動ですが、私に劇的な変化をもたらしてくれました。
他の多くのフィクション作品でもそれは可能ですが、ディストピアを題材にしたものは現代の問題点に通じる要素が各所に散りばめられており、そして私の不安の根源もそこ(現代の問題点)に行き着く所が少なからずありました。そういった点で、ディストピア作品に触れることがOCD改善の一助となっているように感じるのです。
もちろんこれには個人差があると思います。もしかすると不安ばかりが掻き立てられ、余計に苦しくなってしまう人もいるかもしれません。
ただ、このイメージトレーニングにはOCD以外の問題についても何か効果があるのでは?と期待して、今回このように綴ることにしました。
あ、本当は、「こんなのも読めるくらい元気になったよ!」という報告も兼ねています。笑
秋の夜長、これからたくさん本を読んで、もちろん秋の味覚もたくさん食べて、元気に過ごしていきたいと思います。
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