外着で家のトイレに行こうとした時のこと
ザッチのOCDの症状の一つに『汚染恐怖』があります。
外出用の服(外着)を着た状態で家のトイレに行くと、使用後に便座を除菌シートで念入りに拭かなければならなくなります。
ある日の朝、ヒロが美容院へ行くために準備をしていた時のことです。
支度を終えて家を出る直前、トイレに行きたくなりました。
普段なら、外着に着替えてしまっているし、美容院に行ってからトイレを借りれば良いと思うところです。しかし、その日の数日前、ザッチから「そろそろトイレを掃除したい」と聞いていたので、もしかしたらちょうど良いタイミングかもしれないと思い、聞いてみました。
ヒロ 「外着に着替えちゃったけど、トイレ行っていい?」
ザッチ「え・・・」
この時ザッチは気づいていないかもしれませんが、もの凄く顔をしかめていました。
その表情でザッチの気持ちを察したので、
ヒロ 「美容院でトイレ借りるからいいよ」
ザッチ「そうしてくれると助かる。」
ここでヒロ的には会話が終わったと思っていました。
とはいえ、美容院に行ったとたんにトイレを借りるのも少し失礼な気がして、ヒロは思考モードに入ります。
道中ホームセンターの外側にトイレがあったな~、とか
そこを使うには元々家を出ようと思っていた時間より数分早く出ないとな~、とか
そんなことを考えていた時、ヒロがため息をついたそうです。(自分では全く意識していませんでした。)
ザッチ「行きたいなら我慢しないでトイレ行って良いよ。」
後から聞いたことですが、ヒロのため息に反応して遠慮モードに入ったそうです。
しかし、ヒロ的にはザッチの言っていることがさっきまでと正反対のことだったので、ストレスと不信感でいっぱいです。
結局、家のトイレには行かずにホームセンターのトイレを使いました。
ヒロとしては家のトイレを使えるか否かは、実は今回の件に関してどうでも良いことでした。
しかし、ヒロは納得できる予定変更には対応できるのですが、納得できない予定変更は全く対応できません。
つまり、「外着でトイレに行くとザッチが大変という情報」と、「そろそろ掃除をしたいと言っていたのでこの日に限り例外的に外着でトイレに行っても良いかもしれないという情報」という2つの情報があったため、とりあえず質問してみます。
ここでは回答がYESでもNOでもどちらでも納得できるので対応可能です。
しかし、ザッチは質問に対して言いよどんで、しっかり回答しませんでした。
はっきりした答えが欲しいヒロとしてはここでプチストレスですが、相手の表情からNOという情報を読み取り会話を終了させます。
ここで、ヒロはNOという情報をインプットしてしまったので、これをYESに書き換えることはかなり難しくなります。
※例えばその時地震が起きてドアがゆがみ外へ出ることができなくなった等の大事が無ければ上書き不可能なのです。
だから、ザッチからの後追いの情報が邪魔になり、排除したうえで、ザッチへの不信感だけが残ってしまいました。
私は、日頃からヒロさんに私のOCDの症状で迷惑をかけていることを、とても申し訳なく思っています。私が嫌な思いをしていることはなるべく隠して、ワガママにならないようにすることがマナーだと思っていました。
しかし、ある日の話し合いで、ヒロさんにとっては、私が自分の感情を表に出さないことは「無用な遠慮」であり、無用どころか私に対する不信感の原因になるものだということが判明しました。
ヒロさんには「遠慮」の概念がなかなか伝わりにくいようです。
それ以降、私の「好き嫌い」に関しては、できる限り、自分の本音を話すように心がけるようになりました。
今回の、ヒロさんが美容院へ行く前のトイレの一件について、私視点で少し書かせてください (若干、苦しい言い訳を含みます)。
その日、私はとても体調が悪く、頭がぼぉっとしてうまく思考が働いていませんでした。トイレに行くのもやっとで、吐き気がしていました。
そんな中、ヒロさんがトイレへ行っていいか尋ねてきます。
ヒロさんは、外着でのトイレ使用を私が嫌がることを知っています。私の体調が悪いことも知っています。そんな中、トイレへ行きたいというのだから、何か理由があるのだと思いました。
「もうトイレ我慢できないよ!」
「美容室へ行ってすぐトイレ借りるなんて失礼だ…」
そんな理由かなーと、働かない頭で考えていました。
正直、トイレ掃除するのは体力的にとても辛かったし、できれば外でして欲しいなと思いました。(恐らくここで顔をしかめていたのでしょう、ごめんねヒロさん)
なので正直に、「そう(美容室でトイレ)してくれると助かる」と言いました。
すると、ヒロさんは嫌そうな顔をして、「はぁー」と大きなため息をつきました。
そもそも「トイレ行って良い?」という質問自体が、数日前にした「そろそろ掃除したい」という旨を受けてのものだという可能性について、その時の私は想像できませんでした。そして掃除は私が数日前に既に済ませてしまっていました。ヒロさんに、トイレ掃除をした旨を伝えるのは、すっかり忘れていました。
ヒロさんのため息を聞いた私は焦ります。
ーヒロさんが不快な思いをしている!怒らせてしまった!!
私は反射的に、どうにかしないと!と思い、「行きたいなら我慢しないで行って良いよ」と言いました。
私が掃除をするのが辛いと言って、ヒロさんにトイレを我慢させるのは更に辛いです。私のワガママはヒロさんの不快な感情を圧してまで通すものではないと考えています。
しかし、私がヒロさんを気遣ってした発言は、結果的にヒロさんを更に困惑させ苛立たせるものになってしまいました。とても残念なことです。
ヒロさんの帰宅後に、話し合いをして分かったことですが…
ヒロさんはそもそも「そろそろ掃除したい」と言っていた私に良かれと思って外着でトイレに行って良い?と聞いたようです。「良かれと思って」という感情があるなんて、全く想像できませんでした。
もしそう思っているのなら、トイレに行って良いか聞く場面で、
「掃除したいって言っていたけど、都合いいなら今行って良いかな?」
などのように尋ねてもらえれば、私も無用な遠慮などせずに済んだわけです。
もしくは、ため息をコントロールしてもらえると助かったわけです。
しかしヒロさん的には、自分発信の会話 (特にとっさの場面)で、思考の背景や条件を踏まえて説明するのは難しく、思考に伴うため息(相手を非難する意味はないらしい)をコントロールするのも難しいということです。
最終的に、ヒロさんの頭の中では、私への不信感だけが残った…という残念な状況。
コミュニケーションはなかなか難しいものです。